1950-1960 ニューヨーク/ロサンゼルス 03

 そんな中、ロサンゼルスより少し遅かったけれどニューヨークもだんだん景気が回復してきてね。ジャズシーンも再び盛り返してきたんだ。それでクールジャズで失敗したマイルスも、再びニョキニョキと鎌首をもたげてきたんだ。次なるジャズはどうすべきか、なんて模索してね。いろいろ楽器を眺めまわして、それでドラムに目を付けたんだ。これまでのビバップでは、ドラムはビートをキープすることが基本で、随所随所でフィルを回し、他の演奏者を後方から鼓舞することが大きな役割だったけれど、今後はドラマーも他の奏者と同じように自分を主張するべきだ、とマイルスは考えたんだ。それでドラムのシンコペーションをより細分化し複雑化させることを考えついたんだ。音を細分化して他のリズムセクションの音と絡める、それは素敵な発想だったよ。マイルスは早速そのアイデアを同じアパートに住んでいたドラマーのアート・ブレイキーとピアノのホレス・シルバーに話したね。二人はマイルスのアイデアを聞いて、それは面白いと思ったね。それでアート・ブレイキーは従来のビバップにはないバップを生み出し、ホレス・シルバーも、これも従来のビバップになかったファンキーな奏法を見せたんだ。彼らの演奏は斬新だったね。ニューヨークのジャズファンたちは彼らの音楽にハードバップと名前を付けて歓迎したね。それはビバップよりさらにホットで激しいバップだったんだ。だけどこれはマイルスにとっては残念なことに、彼が思い描いていたクールな音楽じゃなかったってさ。まあメンツからしても、こればかりは仕方ないよね。