1950-1960 ニューヨーク/ロサンゼルス 02

 クールジャズがウエストコーストジャズとなったのは一九五一年ごろ。ジャズクラブ・ハーグでジェリー・マリガンを中心とするジャムセッションが行われだしてね。チャット・ベイカーはそこで発掘されたんだ。ビバップでは同じメロディーラインを一斉に演奏したけれど、ジェリーとチェットは対位法、お互いを補完し、相手が次に何を演奏するかを予測しながら演奏するという方法を選んでね。彼らのカルテットは一気にスターダムへとのし上がって行ったんだ。マイルスはチェットが白人だから人気者になったんだと少しひがんだりもしたようだけれど、その腕は認めていて仲も良かったよ。十代の頃のチェットは不良だったね。家出をして友人と一緒にお金持ちのゲストハウスに転がりこんでね。そこでマリファナの吸いまくり。そのうちとうとう売人までやるようになって捕まって軍隊に放り込まれてさ、もう散々な青春だね。だけど奴の吹くトランペットはカッコよかったんだ。チャーリー・パーカーもチェットを認めて、彼のコンボにも加えていたほどさ。それにチェットと言えばあの甘い歌声。奴の歌うマイ・ファニー・バレンタインは多くの女の子を虜にしたよね。顔が良くってトランペット吹きで、甘いボイスで哀愁漂う歌を歌う。モテモテになって当然さ。だけど奴の麻薬漬けは結局一生なおらなかったね。売れっ子になると嗜好品もレベルアップして、マリファナはやがてヘロインに進化して、結局最後はアムステルダムのホテルの窓から落ちて死ぬけれど、アムステルダムと言えば大麻合法の街だから、それで酔っぱらって落ちたのかもね。