04 部活

「ヌキッチ、部活は何にするん?」と教室に向かう途中、カカトが聞いてきた。「部活って、入らなあかんのん?」雪は尋ねた。「入らなあかんいうて、先生がさっき言うてたやん?」「そうやっけ?」雪は首を傾げて、部活はちょっと邪魔くさいなあ、と思った。「決めてへんのやったら、うちと一緒に吹奏楽せえへん?」不意にカカトが雪の手を取った。「吹奏楽? カカトそんなんしてたん?」雪は少し驚いた。「そうや。小学校のころからトロンボーン吹きや」カカトは少し威張った顔で、ツンと鼻をとがらせた。「人は見かけによらへんなあ」雪は苦笑いした。「何やねん、その見かけによらへんって」カカトは頬を膨らませ、二人は思わず噴き出した。そこに「よう、ユキッペ」と後ろから涼太郎が声をかけてきた。「お前どうせ部活決めてへんのやろ? オレ、バスケやろう思うてるから、バスケ部のマネージャーやらへん?」背の高い涼太郎は、そういえば中学の頃もバスケ部だったっけ。雪がボンヤリそんなことを思っていると、横からカカトが口を出した。「あんた、何言うてるん。ヌキッチはうちと一緒に吹奏楽やるんやで」涼太郎はカカトの方を見た。「へえ、ユキッペ。友達できたんや?」「うん、まあ。そんな感じ?」雪はあやふやな返事をして二人を代わる代わる見て言った。「でも、部活は別のんにするわ。吹奏楽もバスケも大変そうや。もっと文科系の、何や軽いのんがええわ」

 そう軽く、軽く。人生は軽く生きなくちゃ。重いものは性に合わない。私は軽い人間になるんや。存在に耐えられなくなるほどに。