1940-1950 ニューヨーク 03
ストライキと戦争、二つの要因で立ち行かなくなったビッグバンドは次々に解散し、食い詰めたミュージシャンたちは新しい潮流であるビバップに期待を寄せて、みんなニューヨークに集まって来ちまった。特にチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピー、二人の人気は絶大で、そのアドリブの掛け合いは当時からもう伝説だったよね。ニューヨーク五二丁目にはチャーリー・パーカーのニックネームであるバードを冠してバードランドというジャズクラブがオープンし、まさにビバップ全盛さ。ニューヨークはミュージシャンだらけになってね。あまりの数の多さに相当な腕の持ち主でも食べれないほどになったってさ。そんな中に若き日のマイルス・デイヴィスもいたんだ。マイルスは十八歳の時セントルイスで、チャーリー・パーカーと一緒のステージに立ったことがあったけど、その演奏の斬新さに全くついていけなくてね、あまりの衝撃に、たちまちビバップにイカレちまったのさ。マイルスはすぐにニューヨークに引っ越してチャーリー・パーカーを探し出し、一九四五年、彼のバンドに登用されてね。そしてここからマイルスの栄光が始まっていくのだけれど、それはまた後の話。さてビバップに魅かれてニューヨークに来たのはマイルスだけじゃない。ニューヨークに集まったその他多くのミュージシャンたちはどうなったかって言うと、数が多すぎて仕事がない。当てが外れたと弱っていたところに第二次大戦が終焉して。するとなんと、戦後景気で映画業界が潤って、だから彼らはゾロゾロと西海岸は映画の聖地、ロサンゼルスを目指したってのさ。