03 オリエンテーション
新入生オリエンテーションがあるというので体育館に行った。クラスごとに別れて座るように担任が声をかけたので、みんなそれに従ってノロノロと移動した。背の順に並んで座ると隣は髪の毛の茶色い子だった。
「あんた、何いうん?」と、茶髪の子が聞いてきた。
「私、雪。貫城雪いうのん」と、雪が答えると「へえ、じゃあツラッチだね」と茶髪の子は勝手に変なあだ名をつけて、「うちはカカト。浦部カカト言うんや。足の裏のカカトやで。変な名前やろ?」と笑った。
「そこ、静かに」と教務担当の先生が二人を指さして言った。カカトは急いで、前の子に隠れるように少し首をすくめて、雪に向かってペロッと舌を出して笑った。人懐っこい子だなと雪は妙に感心した。「私じゃこうはいかない」。
オリエンテーションの内容は、要するに学校での生活や授業の進め方についてのこまごまとした説明だった。雪はボンヤリ聞いていたので聞いた端から忘れてしまったけれど、まあ、いざとなれば誰か教えてくれるだろうと、まったく呑気なものである。チャイムが鳴ってオリエンテーションが終わり、体育館を出るとカカトが走って寄ってきた。
「ねえ、ヌキッチ。先に行ってまうなんてひどいやん。うちら友達やろ?」
雪は少しビックリした。そうか、私たち友達になってしまったのか? 入学式の時、友達は作らないと心に決めたけれど、あの決心はもろくも崩れ去ったのか? まあいっか。カカトはちょっと面白い。