1940-1950 ニューヨーク 02
ビッグバンドの終焉と言えば一九四〇年から音楽業界で始まったレコーディングストライキもそれに一役買ったね。本来はミュージシャンを守るために行われたストライキだったんだけど、結果は皮肉にもビッグバンドの首を絞めたよね。このストライキが相手どった業界はラジオの放送局とレコード会社で、要求はまあ平たく言えば「録音より生演奏を」ってな感じかな。放送局に対しては、「放送に使う音源は生演奏であること」、レコード会社に対しては、「録音に使うミュージシャンたちのギャラと印税をもっと上げること」だね。ジョー・ペトリロ率いるアメリカ音楽家連合会はミュージシャンの保護をうたって、あちこちに圧力をかけていったね。結局、ラジオ局はストに負けてミュージシャンと生演奏の契約を交わしたよ。でもそれじゃ割に合わないんで、契約バンドのメンバーの数をじわじわと減らすことで金銭的に折り合いをつけていったんだから皮肉だね。レコード会社の方は少し粘ったので、レコーディングが行われない時期が一九四二年から二年以上もあったりしたけど、結局は折れて。と、まあ、とにかくストなんてやっているうちにビッグバンドはどんどん弱っていったのさ。人気ナンバーワンだったファーストハードが解散してね、そのあと立て続けにベニー・グッドマン、トミー・ドーシーなんかの楽団も解散してね。グレン・ミラーは一九四二年、戦場への慰問公演の移動中に撃墜されて死んじまって、すでにこの世にいなかったね。まあ、こんな感じで三〇年代を大いに沸かせたビックバンドは四〇年代半ばでほとんど消えちまったのさ。