1940-1950 ニューヨーク 01

 一九三九年、ドイツがポーランドに侵攻し第二次世界大戦が始まると、偶然なのか必然なのか、スイングジャズの黄金期も終焉をむかえたね。ベニー・グッドマンやグレン・ミラーの人気に陰りが見え始めて、他のビックバンドもそれまでの勢いを失っていったね。人々はスイングジャズの甘くてムーディーなメロディやリズムじゃ物足りなくなったのかな。それとも若手のミュージシャンたちには、もっと刺激が必要だったのかな。ともかくその頃から、ビックバンドで演奏しつつもその演奏に不満をもっていた奴らが、仕事が終わったその後に、夜な夜な集まるようになったんだ。ハーレムの一一八丁目『ミントンズ・プレイハウス』。今や伝説の場所だね。メンツだってホントたいしたもんさ。グッドマン楽団のギタリスト、チャーリー・クリスチャン。キャブ・キャロウェイ楽団のトランぺッター、ディジー・ガレスピー。ジェイ・マクシャン楽団のサックス奏者チャーリー・パーカーに、それに同クラブで演奏していたピアノ奏者セロニアス・モンク。ドラムのケニー・クラーク。彼らは即興演奏の掛け合いを楽しみ、やがてそれがビバップと呼ばれる音楽になっていったんだ。複雑で激しいビバップは若手ミュージシャンたちにどんどん伝染していったね。スイングからビバップへの移行は若手ミュージシャンたちの下克上であり革命だったよ。彼らは革新的なメロディラインやリズムを次々と生み出して、複雑に絡ませては観客を熱狂の渦に巻き込んでいったんだ。ホント、スイングからビバップへの進化は画期的な出来事だったね。