1930-1940 ニューヨーク 02
エリントン楽団と言えばスィングだよね。スイングしなけりゃ意味がない。世の中は世界恐慌のため、とても重苦しい空気に包まれていたけれど、スイングジャズの甘いメロディと軽快なリズムはそんな世相を吹き飛ばすが如く、そう、さわやかな風のように広がっていったんだ。世相が暗いと人々は陽気で軽やかな音楽を求めるものかも知れないね。ともかくエリントン楽団はスイートで踊りやすいスイングを確立し、ジャズはダンスミュージックに進化していったんだ。即興的な演奏を売り物にしてたニューオリンズジャズは下火となって、それと反比例するようにスイングの人気はどんどん上がったってわけ。それでアメリカでダンスブームが起こってさ。全国各地にダンスホールが乱立し、スイングジャズが連日演奏されるようになったんだ。
都会的に洗練されたニューヨークのジャズ界で、白人の率いるビッグバンドも次々に興ったよ。トロンボーン奏者のグレン・ミラーにトミー・ドーシー、クラリネット奏者のベニー・グッドマン。彼らはそれぞれに楽団を作りスィング界を牽引していったわけだけれど、色々違った特徴があったね。グレン・ミラーは「ムーンライトセレナーデ」や「茶色の小瓶」など誰もが一度は聞いたことがある名曲をたくさん生み出したし、トミー・ドーシー楽団は、まだ当時新人だったフランク・シナトラを大スターにのし上げたね。ベニー・グッドマン楽団は一九三八年、ジャズミュージシャンとして初のカーネギーホールでの演奏を果たしたよ。三〇年代はまさにスイングジャズの黄金期だったのさ。