03_生臭坊主・永超 02

 しばらくたったある夜のこと。不吉な風がザワザワと吹いて暗雲が空に立ち込めた。「何だか変な空模様じゃのう」と夫婦が窓から外を見ると、恐ろしげな者たちがどこからともなくやってきて、ひそひそと言葉を交わしながら村中の家々に妙な印をつけて回っていた。

「あれは何じゃいなあ」「さて、なんじゃろうなあ。気味が悪いなあ」夫婦はひそひそと言葉をかわし、「うちにも印はあるかいなあ」と戸を開けて見ると印はなかった。

「うちにはないわいなあ」「ほんになあ」と、顔を見合わせて戸を閉めたが、そこにどこからともなく声が聞こえた。

「この家は永超僧都に魚を捧げた者の家だ。印をしないことにしよう」

 夫婦はアッと驚いて、目を開けると夢だった。

「夫婦で同じ夢を見ていたのかね」「ほんに。妙なこともありますのう」そう言って笑いあった。

 それからしばらくして村に疫病が流行った。

 人は皆その病に侵され亡くなる者も多々あった。魚の夫婦のみ、この疫病を免れた。「不思議なこともあるもんじゃ」と夫婦は興福寺に出向き、僧都にその話をすると、僧都は「それは良かった」と言って夫婦にお土産を持たせた。

 魚を食べる生臭坊主には、戒律を守る真面目な僧にない何か妙な神通力があったのかも知れない。

 てなことで、とっぴんぱらりのぷう。