ボーンコレクター 02-01
イソギンチャクの触手が絡みつき心臓が苦しくなって目が覚めた。「ここは?」とボーンコレクターは電車の車内を見回した。数人の人がバラバラと座席に座っている。「山手線の車内だ」と首飾りの骨を握りながら彼は少し身体を起こした。
何だか妙な夢を見ていた気がする。世界の始まりのような、残酷物語のような。ハイヌウェレは男たちによって穴に埋められ、アメタは九本のココヤシの枝をその地面に刺した。抜き出した枝に付着した頭髪と血で、アメタはハイヌウェレの死を確認して掘り起こし、彼女をバラバラに切り刻んだ。そして埋めた舞踏の庭には様々な芋が生まれてきた。肺の芋、乳房の芋、眼球の芋、恥部の芋、臀部の芋、耳の芋、太腿の芋、頭の芋。そして胃だけは大きな壺となり、その芋たちを保管する聖なる場所にしまわれていった。
ボーンコレクターは首を左右に振りしっかり目を覚まそうとした。金色のカプセルの効用がまだ少し続いているらしい。現実と幻想が混沌として入り混じり不思議な舞踏を踊っている。電車を降りて岐路に着こう。このままでは頭がおかしくなってしまう。外はビルの明かりが煌々と夜を照らし、そう、この街のどこかに私の帰るべき部屋がある。
つり革を持って立ち上がり、次の停車駅を見ると、どうやら品川であるらしい。「品川なら悪くはない」と思わず口に出したけれど、何が悪くないのか自分でもよくわからない。「早く部屋に帰って布団にもぐって眠らなくちゃ」そんな独り言を言って彼は電車を降りた。