1920-1930 シカゴ/カンザスシティ 01
ニューオリンズのミュージシャンたちがこぞって移住したのがシカゴだったわけだけれど、これにはいろいろ理由があるんだ。
そのまず一つ目は黒人街の出現。それまで黒人労働者は南部の巨大農園での働き手として必要とされていたんだけれど、産業革命の浸透で北部の工業地帯でも必要とされるようになって、それで北部のあちこちに黒人街ができてきたんだ。黒人が多く都会に住むようになったのが、その地にジャズを広めるのに一役買ったってこと。シカゴにもサウスサイドなんて黒人労働者の街があって、そこを基盤にジャズはシカゴに進出したんだ。
二つ目はアメリカで禁酒法が制定されたこと。史上最悪のこの法令のお陰でギャングたちは闇酒場でがっぽがっぽと金を稼ぎ、映画ゴッドファーザーの世界が実際に展開されていたんだ。そしてシカゴはこのギャングたちの中でも特によく知られているあの男、アル・カポネが仕切っていたもんだから、禁酒法なんてあってなきがごとし。スピークイージーと呼ばれるもぐり酒場では連日連夜ジャズが演奏されて、まあものすごく繁盛したってわけさ。それまでの賭博や窃盗だけのギャング組織が酒の密輸によって多大な利益を上げるようになり、同時に街も潤ったってわけ。禁酒法は国家の税収を減らし、ギャングたちを潤わせた。アル・カポネの君臨するシカゴはまさに禁酒法のお陰で湧き上がっていたんだ。
三つ目はもっと単純な話。たまたまニューオリンズから船に乗ってミシシッピ川を北上するとそこにシカゴがあったんだってさ。