ボーンコレクター 01-13
「それで結局、オホゲツヒメは殺されるんだよね?」とボーンコレクターは言った。
「そうよ」と少女は軽く頷いた。「いつの時代でもどこの場所でも同じなの。人と少し違った能力を持つ人は、初めは崇められて尊敬されたりもするけれど、やがて異端視されて抹殺されるの。余程コミュニケーション能力が高いか、あるいは逆に、敵対するものを皆殺しにできるほど精神力が強いか、でないと異端児は殺されるだけ。凡人にとって突出した能力をもつ人物とは、自分の劣等感を呼び起こすだけの許すべからざる存在なわけで、その対象が身近であればあるだけ憎しみは増幅されるのよね。わかるでしょ? 人はとても危険な生き物よ。自分と違う存在が基本的に許せないの。毛色の違う猫は殺されるだけ」少女は虚空を睨みつけた。「まあまあ」と、ボーンコレクターは少女をなだめ「オホゲツヒメの話にもどらないかい?」と提案した。「戻ってもいいけれど、あとはごく当たり前の成り行きよ」と、少女は小さく息を吸い込んでから、淡々と語りだした。
「結局オホゲツヒメはその夜のうちに村の若者たちに檻から引きずり出されて首を刎ねられる。翌朝その亡骸を見つけた長老たちはオホゲツヒメを可哀そうに思い、憐れみながら土に埋める。すると亡骸の頭のあたりから蚕が出てきて、目には稲が生り、耳からは粟が生り、鼻からは小豆が生り、陰部からは麦が生り、お尻からは大豆が生って、お陰で島の人たちは豊かな食生活が送れるようになって」それから少女はポツリと言った。
「まあ、世の中ってそんなもんよね」