ボーンコレクター 01-12
オホゲツヒメが捕えられたのは祭りの最終日だった。
「あれは不思議な妖怪です。外道の法を操って食べ物を生み出しているのです。あのような者をこの村に置いていて良いわけがないでしょう」と、オホゲツヒメを縄で縛りあげ、一人の若者が長老会に訴え出た。
「しかし、特異な能力というものは村が栄えていくためには必要なものかもしれんぞ」と長老の一人が言った。
「何をおっしゃる長老様。妖怪はどこまでも妖怪で、我々人間とは別物なのです。それによくお考えになってみてください。我々はこれまで椰子の実やマングローブの皮を食べて、それで満足して生きてきたではありませんか。饅頭だのスープだのに惑わされて椰子やマングローブを粗末に扱うようになれば、ひょっとすると椰子やマングローブの神様が気を悪くなさるかも知れません。今までたくさん採れていたそれらの食物が一切採れなくなるかも知れません。あんな妖怪の能力を借りず、我々はこれまでの生活に則って椰子やマングローブで満足すべきなのです」
「まさかそんなことあるまいよ。ワシらが饅頭やスープを食べたところで神様は気にもせんじゃろうよ?」
「いえ、きっと気になさいます。神様というものは元来やきもち焼きなのです」
「しかしだなあ」
「しかしもへったくれもありません。我々はオホゲツヒメを極刑に処することを欲します」
若者たちは激高し、長老たちは弱り切った。話はどこまでも平行線で行き着く先が見えなかった。