ボーンコレクター 01-08

 オホゲツヒメが十五歳になった年、マロの舞踏会が開催された。人々は椰子の老木に祭壇を設け、愉快に楽器を演奏しながら、その周りを踊り歩いた。祭りは九日の間、昼夜の別なく続けられた。広場には骨董屋や貝殻屋が店を出し、水晶や翡翠、琥珀などが売られた。象牙や玳瑁、犀角などが売られた。玩具や蛇の皮も売られた。そんな露店の一画にオホゲツヒメも店を出した。

 オホゲツヒメの店は饅頭屋だった。そこでは、それまで島の人々が食べたこともないような美味しい饅頭が提供された。一度食べれば病みつきになる味で、店は大繁盛だった。オホゲツヒメの饅頭を食べると、島民がそれまで美味しいと感謝して食べていたマングローブや椰子の実が、まったく味気なく思えるほどであった。一日でたちまち評判となり、二日、三日と日が経つにつれ饅頭を買いに来るお客さんはうなぎ上りに増えていった。

 彼女は店頭の大皿に饅頭を並べた。そして売り切れると奥の天幕に入り、すぐにまた大皿いっぱいの饅頭を持って、天幕から出てきた。大人たちは饅頭を買って、ただ「美味しい、美味しい」と喜んで食べたが、オホゲツヒメと年の近い、若者たちは嫉妬した。「あの天幕の中に山ほど饅頭があるのだろう。よし、中に入って盗んでやれ」と、数人の若者が悪心をおこした。オホゲツヒメのいない頃合いを見計らい、天幕にそっと入った。

 ところが天幕の中には、饅頭はおろか調理道具らしきものすら、何も見当たらなかった。それらしいものと言えば、水の入った水甕と、葉っぱの入った大きな籠と、あとは綺麗に並べられた大小のお皿ばかりであった。