ボーンコレクター 01-07

 そのあと亀は卵を五つ産んだ。卵は太陽に照らされてポカポカと温まり、やがてそこから火・水・木・金・土が生まれた。そしてこの世のすべての物質がこの五つの元素の組み合わせで出来た。そののちまた亀は卵を一つ産んだ。卵は太陽に照らされてポカポカと育ち、やがて中からマヨの母が生まれた。マヨの母は女だけれど男でもあった。一人だけれど二つの要素を持っていた。女であり男であった。この世に現れた最初の人間、マヨの母は両性具有の人であった。マヨの母の女の部分は意思をつかさどり、男の部分は知性をつかさどった。性の分離は虚構に過ぎず、ヨニはリンガを嵌めこんで、それで一体であった。ある時それが身体の低い部分で知覚され、それが愛となった。この愛は婚姻の愛で、マヨの母は一人で一対の夫婦となった。やがてマヨの母は子供を産んだ。闇夜が生まれ幽冥が生まれた。星空が生まれ海原が生まれた。精気が生まれ昼日が生まれた。睡眠が生まれ死が生まれた。島は子供でいっぱいになった。子供たちは椰子の実とマングローブの皮を食べてすくすくと育ち、さらに婚姻して子供を産んだ。ところがそうして増えていった子供たちの中に一人、奇妙な子供がいた。名をオホゲツヒメ、あるいはハイヌウェレといった。

「おや、何と?」と、ボーンコレクターは目を丸くした。「オホゲツヒメが出てくるのかい?」「そうよ。出てきちゃおかしいの?」少女は小首を傾げた。「おかしいかどうかはわからないけれど」と彼も小首を傾げて思った。オホゲツヒメは日本の書物、古事記に出てくる神様なんだけれど、まあいいのかな?