ボーンコレクター 01-02
新宿の街をあてどなく歩きながら、彼は首飾りをいじる。それは綺麗な骨の首飾り。それは愛しい彼女の小指。「ねえ君はどうして骨になってしまったんだい?」もちろん小指は答えない。ただビョウビョウと強い風が摩天楼にうごめく人ごみの上、音を立てて吹き抜けるだけ。
しょんべん横丁でホルモン屋に入り、骨付きカルビと熱燗の銚子をそれぞれひとつずつ注文する。行きつけの店ではないけれど、ボーンコレクターの彼としては、やはり食べ物も骨付きであったほうが嬉しい。酒と料理を待つ間に、彼は首飾りを首から外し、綺麗な小指をテーブルに置いて、もう一度やさしく語りかける。「ねえ君はどうして骨になったんだい?」もちろん小指は答えない。
「兄さん、その骨の主と会いたいかい?」不意にひげ面の男が横に座り、彼の銚子をひったくり赤ら顔で笑う。彼は少しムッとして吐き捨てるように言う。
「会えるものなら会いたいね」
ひげ面の男はへへっと笑い、まるで悪びれた様子もなく彼のカルビをムシャムシャと頬張り、ぺっぺと骨を吐き出した後、おもむろにポケットから錠剤を取り出して、テーブルに置かれた小指の横に三粒並べて言う。
「こいつを飲めば会えるぜ?」
いぶかしげに男を見ると、男は銚子から直にグビグビと熱燗を飲み干して「じゃあな」と言って去る。彼はポカンと、まるで狐につままれたような塩梅であったが、テーブルの上にはちゃんと三つ、錠剤が並んでいた。