アングラ劇『犬神ぢごく変』 14-01
第十四幕
古寺の庭、血の池を眺めながら申秀はぼんやり虚空を眺める。周りに散々打ちのめされた弟子たちがうめきながら転がっている。その地獄の門をそっとあけて村長が入ってくる。
村長「申秀や、申秀や」
申秀「見えぬ。どうしても見えぬ」
村長「何が見えぬというのじゃ?」
申秀「見えぬ、見えぬ」
弟子「そ、村長、無駄でございます。師匠がああして考え込むと、もう誰の言葉も耳に入りませぬ」
村長「お前たちはどうした?」
弟子「師匠の見たい地獄を演出するため、ボロボロに打ち据えられました」
村長「これはまたひどい有様じゃのう?」
弟子「このままだと、いずれ誰かが死にまする」
村長「ほんに、困ったことだ」
弟子「師匠は何かに憑りつかれているとしか思えませぬ」
申秀「見えぬ。見えぬ。見えぬのじゃ」
村長「ああ、申秀め。やはり巫女殿の言われる通り犬神に憑りつかれているのじゃな」
申秀「見えぬ。見えぬ。見えぬ。見えぬ」
村長「おお、ワシが見せてやろう」
申秀「なに?」