アングラ劇『犬神ぢごく変』 13-02

村人「簡単に捕まりました。ダンビラも手放し、何やら放心しているようです」
巫女「ほれ。それが犬神に憑かれた証拠。犬を逃がしてすっかり呆けたようであるな」
村長「よし。では伏姫を木に吊るせ」
巫女「もっと高く。もっと高く吊るせ」
村人「おお」
村長「それからどういたしますので?」
巫女「村人たちで手分けして落ち葉や枯れ枝を拾ってまいれ」
村長「よし、拾ってまいれ」
巫女「村長にはこれより呼びに行ってもらいたい者がおる」
村長「さて、それは誰でございましょう?」
巫女「申すまでもないことじゃ。この娘の父、申秀じゃ。奴は例の古寺におるじゃろう」
村長「呼んで何をなさりますんで?」
巫女「それはそちにはどうでも良いこと。ただ奴に地獄変のために村で最高の地獄を用意してやったと言えば良い」
村長「最高の地獄ですな?」
巫女「そう。最高も最高。極上の地獄。そう言ってやれば奴め随喜の涙を流して飛んでくること間違いない」
村長「そんなものかのう?」
巫女「ああ、そんなものだ。奴自身もまだ気づいておらぬ、地獄変を完成させるためにもっとも必要なものを皆で用意してやったと言ってやるがよい」
村人「集めた小枝や落ち葉はどういたしましょう?」