アングラ劇『犬神ぢごく変』 13-01
第十三幕
村人に取り囲まれた伏姫。ダンビラを構えるが、八房を逃がしたことに安堵さいたのか、先ほどまでの気合は見えない。巫女は怒鳴りたて村長も目を怒らせる。
村長「伏姫。お前は自分のしたことがいかなることかわかっているのか? すべてお前の父御のため行ってきたことなのに」
伏姫「父は犬神になど憑りつかれておりませぬ」
巫女「父に憑りついていた犬神は、どうやらそなたに乗り移ったようだな」
村長「なんと。犬神は伏姫に乗り移ったか?」
村人「しからば我々は一体、どうすれば良いのだ?」
巫女「この犬神憑きの娘を捕えよ」
村長「伏姫を捕えよとおっしゃるのか?」
巫女「そうじゃ。娘を捕えるのだ。そしてその大きな木に吊るすのだ」
村長「吊るすのですか?」
巫女「そうじゃ。吊るすのじゃ。すべては村を守るため」
村長「村を守るため」
村人「村を守るため」
村長「よし、伏姫を捕えよ。グルグルに縛ってしまえ」
伏姫「あああ」