アングラ劇『犬神ぢごく変』 06-02
東一「合いなすったじゃねえ。あの絵師の奴に合わされたんじゃ」
村長「おうおう。あんたらが怒るのもごもっともじゃ。じゃがしかし、ここはひとつワシの顔に免じて矛を収めてくれんかのう?」
平吉「なんであんたの顔に免じなくてはならないんだ? おれはアンタに何の恩恵も受けちゃいねえ」
東一「そうじゃ、そうじゃ。顔に免じろというのなら、それ相応の小判でも包もうっていうってのが人情っなんじゃねえか?」
村長「ああ、申秀の奴め。困った者たちを雇ったもんだ。このやくざ者ども、いったいどう扱えばいいんじゃ」
東一「おうおう、村長さんよ。なに一人でブツブツ言っているんだよ」
平吉「さあさあ、一体どう落とし前をつけてくれるんだ?」
村長「いや、それがまあ、今すぐ何か答えが出るはずもなし。今少しまってくれんか」
東一「待つっていつまでよ?」
平吉「そうよ。それにあんたらもそう悠長に構えているわけにはいかねえぜ? 何せあいつは悪魔が憑いているんだからな」
村長「善後策を考えるよって、まあ今しばらく待ってくれ。それにあんたたち、いちおう給金は受け取ったんじゃろう?」
平吉「それは、まあ、な」
東一「あんな目にあわされて給金ももらいそこなったとあっては男がすたるというもんじゃねえか」