アングラ劇『犬神ぢごく変』 04-02

姉御「バカ言うんじゃないわよ、このトンピラ兄弟。あんたたちのどこに出世する見込みがあるっていうのさ。ちょっと、雀焼きは取り上げよ」
平吉「そんな殺生、言わないでくれよ」
東一「そうそう。もう焼いちまったんだし、食わせてくれよ。目の前でお預けじゃ、こりゃ生き地獄だよ」
姉御「生き地獄はいいね。ざまあ見ろってのさ」
平吉「生き地獄だあ」
東一「生き地獄? はて、最近そんな言葉を耳にした覚えがあるぞ? ああ、そうだ。絵師の申秀先生が何でも地獄絵を描くために、山裾の古寺をひとつ買って実際に生き地獄を造っているという噂、そんなのあったっけ?」
姉御「ああ、それなら私も聞いたことがある。なんでも多額のお金をばらまき若者を集めているって話」
平吉「若者を集めているんだって? 多額の金をばらまいて?」
姉御「そうだよ。あんたたち、こりゃいいよ。地獄の亡者を演じるくらいなら二流のあんたたちでも出来そうじゃない?」
東一「そうか。それなら二流のオレたちもいけそうだな?」
平吉「でも、地獄の亡者の役なんて、ちょっと嫌じゃないか?」
姉御「ばか。何言ってんのよ。あんたたち今でも地獄の亡者みたいなもんじゃない。それをお金貰ってやるっていうんだから、これは願ったりかなったりよ」
平吉「そんなもんかねえ」