アングラ劇『犬神ぢごく変』 04-01

   第四幕


 辻の居酒屋。ボロ着の若者二人が徳利を片手に縁台でしんみり酒を飲んでいる。屋台主の姉御が焼いた雀を皿に乗せ、二人の前に置きながら向かい合って座る。若者の一人が酌をして姉御は盃で酒を受けながら話しかける。


姉御「どうしたんだい、トンピラ兄弟。今夜はやけにしけてるじゃないか。しょんぼり肩なんて落としてさ」
東一「ああ。これはほら、最近やけに不景気だろ。オレたちにまで仕事が回ってこなくなってよ」
平吉「ああ。オレたちいわば二流じゃねえか? おまけに先日しくじっちまったからねえ」
姉御「二流なんて威張ってんじゃないよ。そんな事だから本当に二流になっちまうんだ」
東一「だって本当のことだしなあ」
平吉「そうそう。ホント、オレたちこれからどうやっておまんま食っていきゃいいんだい」
姉御「なんて意気地がないんだろうねえ、まったく。今日の酒代は払えるんだろうねえ?」
東一「いや、それがまあ」
平吉「姉御、頼むよ。ツケか出世払いということにしておくんなさいましよ」