萬劫(まんごふ)亀の背中をば、
沖の波こそ洗ふらめ、
如何なる塵の積もりゐて、
蓬莱山と高からん。
梁塵秘抄 317
鵜飼(うかひ)は悔しかる、
何しに急いで漁(あさ)りけむ、
萬劫(まんごふ)年経(ふ)る亀殺しけむ、
現世は斯くてもありぬべし、
後世(ごせ)我身を如何にせんずらむ。
梁塵秘抄 440
鵜飼(うかひ)はいとをしや、
萬劫(まんごふ)年経(ふ)る亀殺し、
又(また)鵜の首を結(ゆ)ひ、
現世はかくてもありぬべし、
後生(ごしやう)わが身を如何にせん。
梁塵秘抄 355
淡路(あはぢ)はあな尊(たうと)、
北には播磨の書写をまもらへて、
西には文殊師利、
南え南海補陀落(ふだらく)の山(せん)に向(むか)ひたり、
東(ひんがし)は難波の天王寺に、
舎利まだおはします。
梁塵秘抄 315
御厩(みまや)の隅なる飼猿は、
絆(きづな)はなれてさぞ遊ぶ、
木にのぼり、
常盤(ときは)の山なる楢柴(ならしば)は、
風の吹くにぞ、
ちうとろ揺ぎて裏返る。
梁塵秘抄 353