須磨(すま)の関(せき)和田(わだ)の岬(みさき)をかいまうたる車船(くるまふね)、牛窓(うしまど)かけて潮(しほ)や引(ひ)くらん。
-- 梁塵秘抄 474 --
KOMUSUI ICHIZA KAMISHIBAI
須磨(すま)の関(せき)和田(わだ)の岬(みさき)をかいまうたる車船(くるまふね)、牛窓(うしまど)かけて潮(しほ)や引(ひ)くらん。
-- 梁塵秘抄 474 --
東(あづま)より昨日(きのふ)来(き)たれば妻(め)も持(も)たず、此(こ)の着(き)たる紺(こん)の狩襖(かりあを)に女(むすめ)換(か)へ給(た)べ。
-- 梁塵秘抄 473 --
近江(あふみ)とて瀬田(せた)とて来(き)たれば在(あ)りも在(あ)らず、由(よし)もなき栗本(くるもと)の、淀(よど)とて来(き)たれば山崎(やまざき)のはしへ来(き)んけるは。
-- 梁塵秘抄 472 --
寝(ね)たる人(ひと)打驚(うちおどろ)かす鼓(つづみ)かな、如何(いか)に打つ手の懈(たゆ)かるらん、可憐(いとをし)や。
-- 梁塵秘抄 471 --
覚束(おぼつか)な鳥(とり)だに鳴(な)かぬ奥山(おくやま)に、人こそ音(おと)すなれ、あな尊(たう)と、修行者の通るなりけり。
-- 梁塵秘抄 470 --
賤(しづ)の男(を)が篠(しの)折(を)り掛(か)けて干(ほ)す衣(ころも)、いかに干せばか乾(ひ)ざらん乾(ひ)ざらむ七日(なぬか)乾(ひ)ざらむ。
-- 梁塵秘抄 469 --
山伏の腰に着けたる法螺貝の丁と落ち、ていと割れ、砕けて物を思ふ頃かな。
-- 梁塵秘抄 468 --
雨は降る、往(い)ねとは宣(のた)ぶ、笠(かさ)は無し、蓑(みの)とても持(も)たらぬ身に、忌々(ゆゆ)しかりける里の人かな、宿貸さず。
-- 梁塵秘抄 467 --
高砂の高かるべきは高らかで、など比良の山高々高と高く見ゆらん。
-- 梁塵秘抄 466 -
水馴木(みなれぎ)の水馴(みなれ)磯馴(そなれ)て別れなば、恋(こひ)しからんずらむものをや睦(むつ)れ馴(なら)ひて。
-- 梁塵秘抄 465 --
東屋(あづまや)の妻(つま)とも終(つゐ)に成(な)らざりけるもの故(ゆへ)に、何(なに)とてむねを合(あは)せ初(そ)めけむ。
-- 梁塵秘抄 464 --
我(われ)は思(おも)ひ人は退(の)け引(ひ)く是(これ)や此(この)、波高(なみたか)や荒磯(あらいそ)の、鮑(あはび)の貝(かい)の片思(かたおもひ)なる。
-- 梁塵秘抄 463 --
伊勢(いせ)の海(うみ)に朝夕(あさなゆうな)に海女(あま)の居(ゐ)て、採り上ぐなる、鮑(あはび)の貝(かい)の片思(かたおもひ)なる。
-- 梁塵秘抄 462 --
擇食魚(つはりな)に牡蠣(かき)もがな、唯(ただ)一つ牡蠣も牡蠣、長門(ながと)の入海(いりうみ)の其(そ)の浦(うら)なるや、岩(いは)の稜(そば)に附(つ)きたる牡蠣こそや、読む文(ふみ)書く手も八十種好、紫磨(しま)金色(こむじき)足(た)らうたる、男子(をのこご)は生め。
-- 梁塵秘抄 461 --
恋(こ)ひ恋(こ)ひて邂逅(たまさか)に逢(あひ)て寝(ね)たる夜(よ)の夢(ゆめ)は如何(いかが)見(み)る、さしさしきしとたくとこそみれ。
-- 梁塵秘抄 460 --
わが恋(こひ)は一昨日(おととひ)見(み)えず昨日(きのふ)来(こ)ず、今日(けふ)音信(おとづれ)無(な)くば(あす)の徒然(つれづれ)如何(いか)にせん。
-- 梁塵秘抄 459 --
須磨(すま)の浦(うら)に引(ひ)き干(ほ)いたる網(あみ)の一目(ひとめ)にも、見(み)てしかばこそ恋(こひ)しかりけれ。
-- 梁塵秘抄 458 --
波(なみ)も聞(き)け小磯(こいそ)も語(かた)れ松(まつ)も見(み)よ、我(われ)を我(われ)といふ方(かた)の風(かぜ)吹いたらば、いづれの浦(うら)へも靡(なび)きなむ。
-- 梁塵秘抄 457 --
吹く風に消息(せうそく)をだに托(つ)けばやと思へども、よしなき野辺(のべ)に落ちもこそすれ。
-- 梁塵秘抄 455 --